婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「ふうん、よく見たら小鹿みたいで可愛いい顔してるじゃないか、匠」

チャラ男の藤原が顎に手をおいて品定めするように言う。

「馬鹿言え、子カバだってよく見たら可愛い顔してるじゃないか。ぱっと見で可愛いと思わないなら、それは可愛くないということだ」

さっきから田中と呼ばれた美形は本当に失礼だ。私に何の恨みがあると言うのだ。

私はキッと田中を睨みつけた。

「おいおい、稜、人の婚約者を子カバ扱いするなよ」葛城は穏やかに言う。

そうそう、人の婚約者を子カバ扱いするなんて一体どんな教育を受けているのよ。

そこで私はピタリと固まる。

「誰が?誰の?婚約者ですか?」私が尋ねる。

「君が、僕の、婚約者だよ」葛城はニッコリほほ笑んで答えてくれた。

「ええええええええええええええええ?!」

予期せぬ回答に私は絶叫する。

「あれえ?お父さんに聞いてないかな」今度は葛城が小首を傾げて尋ねる。

「そんな、聞いてません。大体、私はまだ19歳ですよ?!大学に入学したばかりなのに結婚なんて、あ、あ、あり得ないでしょ?!」

「19歳って結婚出来る歳でしょ?それに婚約ってだけで、まだ結婚はしないよ。僕も大学生だからね」

ああ、もう意味がわからない!私はブンブンと首を横に振る。

「大体、私アナタの事なんて知りません!」

私はパニックのあまり、大声で喚き散らしてしまった。
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