婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
今日はバイトがお休みだったので、久しぶりに家族団欒で食卓を囲む…パパ抜きで。

夕飯は私が準備した。メニューは空良と櫂が大好きなハンバーグだ。

いただきます!と言って双子達は勢いよくご飯を食べ始める。

「ゆっくり食べないとだめよ」なんて注意しつつ、夢中に食べる姿を見ていると思わず頬が緩んでしまう。

「今日はプールにいって来たからお腹が空いてるんだよ」櫂がいう。

確かに二人は真っ黒に日焼けしてて夏休みを満喫しているようだ。

対照的に真っ白の私は、相変わらず冴えない夏休みを送っている。

…それも今週までだけどな!

来週は待ちに待った軽井沢の合宿である。

夏の避暑地で中谷先輩とテニス。何て素晴らしいの。

そのシチュエーションを妄想するだけで口元がニヤけてくる。

それでもって合宿中にお近づきになっちゃったりしてね。

グフフ、と悪役商会ばりの悪そうな笑みを浮かべると9歳の弟達がピュアな目で私をジッと見つめていた。

私はバツが悪かったので、コホン、と小さく咳払いをして誤魔化す。

その時、キッチンのドアが開き、ただいま、と言ってパパが帰って来た。

「おかえり。早かったわね」ママがパパの方へチラリと視線を向けた。しかし、立ちあがって出迎える気はさらさらないようだ。

双子と私も申し分程度に「おかえり」と言った。

三億円事件以来、私とママの間ではパパの一家の主としての威厳は失墜した。

双子達も大人の微妙な空気を感じ取ったのかパパに対して一歩引いた態度を取るようになった。

幸いな事に、パパはこのアウェイ感漂いまくりの空気を全く気にしてしていない…というか、気づいていない。
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