婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「空良、櫂うまそうな夕飯食べてるなー」妙にテンションの高いパパに双子達は苦笑いを浮かべている。

「ここでパパから発表がある!」

パパが声を高らかにして宣言するが食卓はシンと静まりかえっている。誰も興味を示さない。

さすがに気の毒に思ったのか、しっかり者の空良が「えーなあに?」と気を遣って尋ねた。

「来週家族で軽井沢に行きます!」

アメリカのホームドラマなら「WOW!」なんて言って手のひらでハイタッチでもしそうな展開だが、相変わらず家族からの反応はない。

パパが張り切るとロクな事にならないと皆経験上よくわかっている。

その上、来週は何よりも楽しみにしている合宿だ。双子達に悪いけど「私はパス」と丁重にお断りする。

「駄目だぞー!遥!なんてったて今回はお爺様が招待してくださったんだぞ?断るわけにはいかなんだ」

「ジイジに会えるのー?!」素っ気ない態度を取っていた双子達も祖父の誘いだと解ると急に乗り気になる。

「そうだぞージイジのお友達が軽井沢の別荘に招待してくれたんだ。みんなでバーベキュー大会だ」

ワーイ、と言って双子達は嬉しそうにはしゃぐ。これぞパパの期待通りの反応だろう。

「私は本当に来週は無理なの。お爺ちゃんにも自分で電話しておくね」

パパは私の肩をガシっと掴む。「本当に断れない用事なのか」押しの弱いパパが珍しく食い下がる。

「双子達と一緒に旅行に行きたかったけど、その日サークルの合宿だから。ごめんね、パパ」

「悪いが…それはキャンセルしてくれ」パパは強張った顔で言う。

何度お願いされたってキャンセルなんかするもんか。この日の為にテストもバイトも頑張ったのだ。

「無理よ」私は不愉快さを隠そうともせず眉根を寄せる。

「お前が来なきゃ意味がない!」パパは小声で言う。

「どうゆうこと?」私は怪訝な視線を向けて聞き返した。

パパはコソコソとキッチンの方へ私を呼び出した。


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