婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
夕飯はウッドテラスでバーベキュー大会だ。

私は一旦部屋へ戻り、ショートパンツとTシャツの軽装に着替えた。

煉瓦造りのバーベキューコンロで御曹司自らが、まめまめしく肉や野菜を並べて焼いている。

「兄ちゃん、肉くれよー肉!」

その周囲を双子達は欠食児童のようにまとわりついている。

「さっきから肉肉って、肉ばっか食ってんじゃねえか。野菜食え、野菜!」

葛城が無理やり、野菜を載せようとすると双子達は「やだー」と言ってヒョイっと皿を引っ込める。

いつの間にかスッカリ双子達は葛城に懐いているようだ。さすが長男。

その光景を大人たちは微笑ましく眺めている。

「そういえば、遥、どこに行ってたのよ。何度か部屋に行ったけどずっといなかったじゃない」

「葛城ご夫妻のとこへ挨拶しに行って、そのあとは散歩に行ってた」

「あら、散歩に行くなら誘ってくれればいいのに」

「ごめんね、ママ」…嘘ついて。

あれからずっと葛城の部屋に二人で篭っていた。

飽きもせず、何度も何度も唇を重ねて、蕩けるようなキスをした。

思い出しただけで心臓がばくばくしてきた。

「あら、そのネックレスどうしたの?素敵ねえ」

「ああ!なんか喉乾いたなあ!ジュース取ってくる」

ママに突っ込まれて、私は動揺し慌てて席を立つ。

室内はクーラーが効いて心地よかった。火照った身体がクールダウンされるようだ。

キッチンへ行き、冷蔵庫を開ける。中からグレープジュースを取り出しコップに注いだ。

対面式になっている、カウンターの椅子に腰掛けてジュースを飲みながら一息つく。

不意にポケットに入ったスマートフォンが振動したので、取り出して画面をタップするとLINEのメッセージが届いていた。
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