歪な愛のカタチ
仁と杏奈。
「ただいま~」

外回りで疲れた身体を癒してもらうべく、愛しの彼女と暮らすマンションに足取りも軽く帰りついた。



今日は週末だし?
アイツの女の子の日も終わったし?


そう思っただけで顔がだらしなく緩むけど、別に誰も見てねぇからいいや、と思いながら、短い廊下の先のリビングへ。




「杏奈ただいま!」

扉を開けながら愛しの彼女の名前を呼べば、おかえりなさい仁、と抱き付いてくる……っていうのは俺の願望でしかないんだけど、まぁ…普通におかえり、って笑い掛けてはくれる……ん?………あれ?


リビングの扉を開けた先、目が合った彼女は無言のまま、ただジッと俺を見つめる。



「なに?ど、した?」
「…仁」
「ん?…杏奈?」

にこりともせず名前を呼ばれてビクッとする。
いつもは可愛い彼女が、ご機嫌じゃない事だけは分かる。



「いいから座って…」
「おう…なになに?なんでそんな深刻そうな顔しちゃってるワケ?」

笑顔が見たくて軽口を叩きながら、言われるままに杏奈の向かい側に腰を下ろす。



「なんだよ杏奈…赤ちゃんできても安心して!俺の全身全霊で杏奈も赤ちゃんも護るから!」

テーブルの上の杏奈の指先をギュッと握って宣言する。


お、俺ってば今良いコト言った!カッコよくね?と杏奈を見れば、なぜだか冷ややかな瞳を向けられていた。


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