歪な愛のカタチ
「どーしても安全日からは離れられないんすね」
「いや、違うんだって!あえて離れたくねぇの!分かる?」
「…仁さんて、見た目すげぇいい男だし、頭いいし、営業成績だって若手ん中じゃダントツじゃないっすか」
「なんだよ気持ち悪ぃな」
「なのにさ、喋ってると高校生のガキみたいっすよね。頭ん中、エロい事ばっかり、みたいな」

耕太の言葉にカチンと来て、煙草を揉み消しながら、テメェふざけんなよ?と、突き合わせてる額を指先でグーッと押した。



「エロい事ばっかりなんじゃなくて、杏奈の事ばっかり、って言ってくれる?」
「……仁さん、ほんっとに杏奈さんの事好きなんすね…」
「おう、好き好き!」
「珍しいくらいストレートっすよね……俺も少し見習わなきゃ、って気になっちまうし……」
「おう、見習っとけ」
「そう言われると微妙っすけど………あぁ、また話が逸れてるし…」
「だから!言っておくけど、毎回話逸らしてんのお前だからな!」
「え?マジで?…うははは。すんません…」

真面目なくせに、妙に適当だったりもする耕太。
まぁ俺も似たようなもんだから、一緒にいてラクなんだけどな。



「とにかくお前はさっきの出せよ?」
「はぁ?そんなの、嫌っすよ」
「なんで?せっかく考えてやったんだろ?」
「だって総務に出すんですよね?」
「そりゃそうだ」
「総務に大目玉食らって、課長から怒られたりしないんすか?」
「しねぇだろ~」
「減俸とか、査定に響くのとか、絶対嫌なんですけど」

真顔でそんな事を言う耕太の名前を、俺は大袈裟なくらい静かな声で呼んだ。



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