魔王の娘が勇者になりたいって変ですか？

「ダイアモンドの装甲を持つと言われるタマゴの装甲を破るなんて……」

　万桜が、目を丸くさせて驚く。
　するとバルドが、小さく笑いながら言った。

「知ってるか？
　ダイアモンドは、炎で燃える」

「え？」

「あと、打撃にも弱い」

「え？え？」

　万桜の顔に戸惑いが現れる。

「簡単に言うとダイアモンド程度の硬さくらいどうってことないってことよ！」

「タマゴを破壊できるのはお前くらいなものだ」

　そう言って中年の男が現れる。

「貴方は？」

　万桜の問いに中年の男が答える。

「俺の名前は、ガウル＝ガルフレット。
　この艦の艦長だ。
　俺のことは気軽におやっさんとでも呼んでくれ」

「おやっさん？」

「ああ。
　この艦では、俺たちは家族だ。
　俺は、お前たちの父親みたいなものだ。
　って、お前の希望は聞いていなかったな。
　どうする？お前も焔やシエラあと同じようにこのパンドラ艦で、俺らと戦わないか？」

　そう言ったガウルの目はまっすぐと万桜を見ていた。

「私が、パンドラ艦に……？」

「ああ、そうだ……」

　パンドラ艦。
　それは、国家の軍であり数々の勇者を育てた組織。
　勇者になることを望んでいる万桜にとっては、ありがたい誘いだった。
　だから、万桜に迷いなどなかった。

「はい！
　私、勇者を目指します！」

　そして、うっかり本音が出た。

「勇者か……
　ああ、お前なら勇者になれる！」

　ガウルが、そう言ってニカッと笑う。

「ありがとうございます！」

　万桜は、ペコリと頭を下げる。

「柊　万桜。
　お前をパンドラ艦訓練生に任命する！」

「あれ……？
　どうして、私の名前を？」

「ふ……
　それは、機密事項ってやつだ」

「そ、そうですか……」

　万桜は、深く追求はしなかった。
　軍には、万桜の想像を超える技術があるのだろう。
　そう考えることにした。

「戦闘員は、お前を含め7名だ。
　そのうち顔を出すだろうから仲良くしろよ！」

　ガウルは、そう言って豪快に笑った。