魔王の娘が勇者になりたいって変ですか?
「バルドさん!」

 シエラが思わず声を出す。

「おう!
 元気そうで何よりだ」

 バルドは、そう言って笑った。

「その果物は、差し入れっすか?」

 焔が、尋ねるとバルドがうなずく。

「ああ、見舞いだ。
 シロ、果物は食べていいんだよな?」

「ええ。
 問題ないわ」

 シロがうなずく。

「なら、今りんごを剥いてやろう」

 バルドがそう言うと万桜が、慌てる。

「わ、私が剥きます!」

 万桜が、そう言って音々斬丸を召喚した。

「待て、お前刀でリンゴを剥く気か?」

「はい!
 こう見えて刀さばきには自信あります!」

 それをシロが、没収する。

「院内は、銃や刃物の持ち込みは禁止なので没収させていただくわ」

「えー。
 それじゃ、果物も剥けないじゃないですか!」

 万桜が、シロにそう言うとため息をついた。
 するとシロに似た女性が、万桜にナイフを渡す。

「これどうぞ」

「え?シロさんがふたり?」

 万桜が、その少女とシロをみて驚く。

「ふたごのいもうとのクロです」

「クロ……さん?」

「はいな」

「自己紹介が遅れたわね。
 私、ナースのシロ=ミサ」

 シロが、そう言って頭を下げる。
 するともうひとりの少女も頭を下げる。

「私、ドクターのクロ=ミサ」

 そして、ふたりは声を合わせていった。

「ふたりあわせて、ミサ=ミサなの」

「シロ=ミサさんにクロ=ミサさん……
 どっかで聞いたことあるような……」

 万桜が、そう言うとシロがクスリと笑う。

「私たち万桜ちゃんに会ったことあるわよ?」

「思い出した!
 レッド愛おじさんの娘さんの!」

「そうそう。
 やっと思い出してくれた?」

 シロが、そう言うとニッコリと笑った。
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