魔王の娘が勇者になりたいって変ですか？

「もしかして……
　私は、それでカリュドーンの猪の被害が最小限に防げたり？」

　万桜が、かみさまに尋ねるとかみさまは、うなずく。

「そうだろうな。
　あとある程度力のあるやつも死なない。
　中途半端に力のある奴は苦しい思いをしただろうな。
　そして、力のあるヤツは死なずに済んでいるだろう」

「そう……」

「だが、その力のあるヤツも無傷という訳にはいかない。
　それで生き残ったヤツの殲滅にクレイジーたちが来たのだろう」

　かみさまの目は怒りに満ちていた。

「ってことは、他の幹部クラスのヤツも出動していたのか？」

　バルドがかみさまに質問した。

「さぁな？
　俺は、神族だがテオスではない。
　そこまでの情報は入ってこないし、予が言っているのはあくまでも憶測のひとつだ」

「そうか……」

　バルドが、下唇を噛んだ。

「ってか、他の幹部クラスのヤツらの強さはどれくらなの？
　クレイジーだけでもあんだけ苦戦したのにバビロンだっけ？
　テオスには、あんなのがゴロゴロいるの？」

　万桜の表情が沈む。

「残念ながらクレイジーもバビロンもテオスの幹部の中では中の下くらいだ。
　あいつら以上の実力のヤツらは、沢山いる……」

「そう……」

　万桜がの表情がさらに暗くなる。

「だが、そう悲観することでもない。
　俺もかみさまもテンションシステムと実力が完全に出せればあいつら以上に戦える。
　かみさまのあの戦闘を見ただろう？
　大丈夫、負けはしないさ」

　バルドが、そう言って笑った。

「だが、あいつだけは警戒しなければいけない」

　かみさまの目が細くなる。

「あいつって？」

　万桜が、かみさまに聞く。

「紅い目のモルテ……
　魔族界火の海地獄の隊長、光狩　いずみだけにはな……」

　かみさまの声のトーンが低くその場に響いた。