魔王の娘が勇者になりたいって変ですか?
 万桜は、一旦バルドとかみさまと別れる。
 そして、兄である黒曜に電話をかける。
 しかし、繋がらない。

「兄さま……」

 万桜が小さくうつむく。

「万桜、黒曜殿と連絡はとれたのか?」

 かみさまが、心配そうに万桜に尋ねる。

「かみさま?
 バルドさんと一緒に焼肉屋に行ったんじゃ……」

「余も姉上殿のことが気になってな」

「そう……
 どう?元気にしてた?
 って、私、あまり覚えてないから聞いてもわかんないか……」

 万桜が苦笑いを浮かべる。

「いや……
 姉上殿にも連絡が取れない。
 どうやら人間界は、カリュドーンの猪の影響で神属界や魔界との連絡が取れないようだ」

「え?
 じゃ、兄さまに何かあったわけじゃないの?」

「それは、わからない。
 だが、黒曜殿も姉上殿もそう簡単に誰かにやられはせぬだろう」

「でも……
 モルテとかに襲われたら……」

「主は、黒曜殿を信じておらぬのか?」

「信じる?」

「ああ、お前の信じるお前の中の兄を信じろ」

 かみさまは、そう言って笑った。
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