魔王の娘が勇者になりたいって変ですか?
 一同は、ガウルのいる食堂へと向かった。
 本来なら、ミーティングルームでするべき話だが人数が多いためこの場で会議をすることにしたのだ。
 ガウルは、集まったメンバーの顔をひと通り見ると言葉を放つ。

「まず言わなくてもわかるだろうがベルゼブブによるグングニルにより大阪はほぼ壊滅だ。
 あれはカリスのカリュドーンの猪と違い、その場にいた全てのものを光により全てを破壊する。
 救護に来てくれていたアンゲロス隊の天使たちとの連絡が途切れた……
 恐らく天使たちはもう……」

 その言葉に一花がうなずく。

「無事ではないでしょうね。
 まさかあんな兵器をベルゼブブが持っているなんてこちらも想定外でした」

「ああ。
 テオスの情報は入ってくるが魔族の情報は全くだからな。
 万桜、お前は魔族側の人間だろう?
 グングニルのことは知らなかったのか?」

 ジョーカーの問いに万桜が答える。

「はい。
 魔族と言ってもベルゼブブは、人魔契約の対象外ですから」

「人魔契約ってなんだ?」

 焔が、そういうとシエラがため息をつく。

「授業で習わなかったっけ?
 人と魔族の契約。
 魔族の好物である一定量の恐怖の感情を与えることを条件に人類にフェアリーの知恵を与える。
 それと同時に一緒にテオスと戦ってくれるという契約よ」

「習ったような習わなかったような」

 焔は、苦笑いを浮かべた。

「もう、しっかりしてよね」

 シエラがそう言うと焔が真面目な顔で言う。

「でも、恐怖の感情ってなんだ?
 死の恐怖とかそういうのか?
 だったら俺、魔族のこと好きになれないぞ」

 すると万桜が言う。

「死の恐怖って、魔族からしてみれば実はそんなに美味しくないのよ。
 中には好む魔族もいるけれど、爽やかな恐怖が全体的に好まれるわ」

「なんだよ?
 爽やかな恐怖って」

「簡単に言うとお化け屋敷とかホラー映画を見た時に放たれる人の感情かなー」

 万桜の答えに焔が苦笑いを浮かべる。

「そんなのが美味いのか?」

「うん。
 恐怖を食べられた人はそのあいだ恐怖を感じないわ。
 だから人類との相性は、いいと思うわ。
 恐怖を感じない人は力を発揮できるから……」

 万桜が、そう言うと小さく笑った。
< 62 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop