魔王の娘が勇者になりたいって変ですか？
「魔族のその恐怖を食べる性質によって俺らはここまでやってこれている。
　だが、人の恐怖が負の恐怖になったとき……
　恐怖を食べる威力が落ちる。
　そうなるとテオスとの戦いが不利になる。
　クソが。奴らそこまで考えての行動なのか？」

　バルドが、そう言って舌打ちをする。

「現状魔族の情報も入ってきていない。
　人魔契約に参加していない魔族も出来ればこちら側についてもらいたいのだが……」

　ジョーカーがそう言って万桜の方を見る。

「無理ですよ。
　私の知っているいの魔王は父のサタンとレッド愛さん一家とハデスさん一家だけですよ……」

　万桜が、そういうと焔が声を上げる。

「ハデスって！
　俺でも知っているぞ！
　邪神、冥府の神、破壊の化身！悪役の王じゃないか！
　そんなの仲間になるはずが……」

　焔が、そこまでいいかけるとゼンが笑う。

「ふ……」

「ゼンさん、何がおかしいんだよ？」

　焔がそう言うとゼンが静かに言葉を放つ。

「それは、ハデス殿が提示した物語だ。
　かつてのハデスは邪神と恐れられていたのは事実だ。
　だが、それは今のハデス殿の祖父である破壊の王だ。
　その破壊の王も、心優しい少女と出逢い恋に落ち丸くなった。
　その息子からは博愛に満ちた心優しい魔王だ」

「なんか、おとぎ話みたいね」

　シエラがそう言うと一花が笑う。

「あら？おとぎ話にもなっているわよ？
　『黒き狼と優しい少女』ってタイトルなんだけど……
　知らない？」

「うん。
　知らない」

　焔が即答した。
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