魔王の娘が勇者になりたいって変ですか?
「テルヲくん……」

 黒髪にツインテールの地味な感じなメガネ少女が心配そうに座来栖の後ろから現れる。

「玉藻……?」

 テルヲが小さな声を出す。

「玉藻ちゃんが、座来栖くんを連れてきてくれたの?」

 万桜が、その少女の方を見る。
 この少女の名前は、多摩月 玉藻(たまづき たまも)。
 テルヲの幼馴染みで祖父が神社の神主をやっており本人もその神社の巫女をやっている。
 玉藻の父親もジルの父親と同じ国会議員だ。

「その……テルヲくんが……
 またイジメられてるから……
 でも……私じゃ、どうすることもできないし……」

 玉藻が、ボソリと答える。

「玉藻ちゃん、ありがとう」

 シエラがニッコリと笑う。
 そして、その後ろをゆっくりと近づいてくる少年がいた。
 少年は黒髪につり目、黒い瞳をしていた。

「あ、もしかしてセーフ?」

 少年は、そう言ってシエラの方を見る。
 少年の名前は、馬神 焔(うまがみ ほむら)。
 シエラの幼馴染みでテルヲや玉藻の幼馴染みでもある。

「焔くんは、遅刻扱いですね」

 白銀がため息まじりにそう言った。

「なんでだよ?先生!」

「悲しいですがこれも仕事です。
 さぁ、みなさんも自分の教室へ戻って下さい」

 白銀が、そう言って手を叩くと教室に入った。

「はぁ……
 もしかして俺、黙って教室に入っていれば遅刻扱い受けなかったんじゃないのか?」

 焔がそう言うとシエラが、怒鳴る。

「どうしてもっと早く来てくれないのよ!
 テルヲ、またイジメられていたんだからね!」

「テルヲ……
 やられたらやりかえす!
 それが出来てこその男だぞ!」

 焔が、そう言うとテルヲが小さく呟いた。

「耐えれるところは耐えないとずっとそのループから逃れれない」

「テルヲくん……」

 玉藻が、心配そうにテルヲの方を見た。

「テルヲ、やるときはやる!
 男とはそういう生き物だ!」

 焔がそう言うとシエラがため息を放つ。

「それ……やるときにやってない貴方が言うの?」

「ま、細かいことは気にせず教室に入ろうぜ!
 今日は、ドールの実習の日だ。
 気合入れて行こうぜ!」

 焔がそう言って笑うと一同は、ゆっくりと教室に入った。
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