初恋 二度目の恋…最後の恋
 中垣先輩は近寄りがたい雰囲気を持っているけど、十分に端正な顔をしている。真剣に研究に向かう姿は知的で素敵だと思う。東京北研究所では何人もの女の子が中垣先輩には憧れていた。誰も相手にはしなかったけど、そんな人が私に傍に来いという。


 それはどういう意味なのだろうか?
 鈍感な私でも分かるくらいに真摯な瞳が私を見つめている。


 …でも、まさか…中垣先輩が???


「今まで長い間一緒に居るときは気付かなかったが俺は坂上が好きなようだ。俺は研究しか出来ない男だから何もしてやれない。それなのに一緒に居たいと思う。坂上が居ない研究室は火の消えたように感じる。だから帰って来て欲しい」


 目の前にいる中垣先輩が言っている意味を言葉は聞こえていたけど、頭の中で理解できてなかった。今日は研究の話を聞くだけのつもりだったのに、今、中垣先輩から告白?されている?さっき以上に心臓が大きな音を立てている。


 私のことを好きだと言ってくれたのは中垣先輩が初めてだった。


「好き??」

「ああ。だから一緒に居たい」



 好きだから一緒に居たい。そんなシンプルな言葉は中垣先輩らしいかもしれない。飾り気のないところが先輩らしいと思う。


 私は中垣先輩のことを嫌いじゃない。だけど、男の人として意識したことがなかった。一緒に研究を共にする同僚であり、同志。


 厳しい時間の制約の中にいつも私たちはいた。

< 165 / 303 >

この作品をシェア

pagetop