初恋 二度目の恋…最後の恋
「送って貰わなくてもまだ大丈夫です。でも、すみません。今からで書類は間に合いますか?」


「大丈夫だ。そんなに難しい書類でもないから」


 中垣先輩について店を出ると、お金は全部中垣先輩が払ってくれた。店のレジの前でお金を取り出して渡すのもどうかと思って、二人で店を出てから私はお財布をバックから取り出した。でも、そんな私を中垣先輩はスッと見つめ、呟くような声を出した。


「いらないから」

「え?」

「奢ってやる。っていうか、払わせるつもりはない」

「でも」

「俺が誘ったから俺が払う。それでいいだろ」


 中垣先輩のことはずっと一緒にいたから分かることも多くて、こんな表情を浮かべている中垣先輩は絶対に受け取ってはくれない。だから、素直に甘えることにした。




「ご馳走様でした。」


「気にするな。俺も楽しかったし、色々話せてよかった。今度、静岡研究所を見に来い。最新式の器材が揃っているし、詳しい研究報告書も見れる。坂上は自分で色々見た方が好きだろ」


 静岡研究所には最新式の器材が揃っているというのは聞いていたけど、それを実際に使ったことはないからどの程度の性能かは知らない。言葉で聞いても、報告書を見ても分かるものではない。研究をしていたからこそ、自分の目で確かめたいと思う。


 でも、そんな時間が私にあるとは思えない。それでも、いつか行ってみたいとは思う。


「はい。その時はよろしくお願いします。色々ありがとうございました」


「ああ。じゃあ、またな」

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