初恋 二度目の恋…最後の恋
「今日はありがとうございました」


「俺も楽しかった」


 中垣先輩は駅の近くにあるホテルを取っていたので、駅まで一緒に歩いていき、その後は私は電車に乗って自分のマンションに戻る。まだ、そんなに遅くない電車の中は人が疎らで珍しく座ることも出来た。窓の外を見ながら考えるのは中垣先輩の事だった。


 中垣先輩の話を聞きながら、何度も尊敬を繰り返す。研究で真摯で自分で納得するまで繰り返す姿勢はやっぱり私の憧れる研究員のそれである。


 そんな中垣先輩から私は『好き』だと言われた。


 中垣先輩の気持ちは嬉しかったし、勿論、嫌いじゃない。研究熱心でその姿勢は心から尊敬していた。それは同僚としてであって、男の人としてではない。でも、今日、私は中垣先輩と初めて男の人として意識した。


『恋人いない歴=実年齢』を更新中の私にとって、初めての告白は心臓をドキドキさせる。でも、好きと言われたから好きになるわけでもなくて…私は自分の気持ちが分からないまま。

 
『恋ってなんだろう』


 そんなことを思う私にとって答えはすぐに出ないと思う。中垣先輩は私からの明確な答えを欲しがっているのかいないのかさえ分からない。


 でも、中垣先輩はどんな答えを私が出しても受け止めてくれるだろう。


 そんな思いを胸に私は自分のマンションに急いだのだった。

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