初恋 二度目の恋…最後の恋
第三章

自分の生き方

 中垣先輩が本社に来ての成果発表会が終わってから私の毎日は普通に戻る。成果発表会に参加しても、中垣先輩と一緒に食事をしても何も変わらない。でも、少しだけ私の心に忘れようとしていた研究への思いが残っていることを思い出させてくれた。


 それはある日のことだった。


 その日は同行もなく、私は一人営業室で資料やみんなの上げてきた数字の打ち込みなどの事務作業に追われていた。そんな私のパソコンに届いたのは中垣先輩からのメールでそのメールを開き、ちょっとだけ笑ってしまった。

 件名:資料
 本文:新製品資料

 そして、添付ファイル。


 本当に簡潔過ぎるメールだけど、中垣先輩らしい。添付ファイルを開くとあの成果発表会で使った資料と別にあの後の研究結果についての報告が書かれてある。あの後、さほどの時間が経ってないのにまた一段と研究は進んでいる。それを読んでいると既に正式発表のプレという感じ。


 新製品の研究報告書は読めば読むほど、中垣先輩の見識の広さと独創的な直観力を感じる。そして、それを実際に成果に導くのは行動力だった。報告書を捲る度に感嘆の溜め息が漏れる。普通では発表されない細かく数値を記入しているので、これは中垣先輩の研究ノートの内容だと分かる。


 読み終わると溜め息が零れた。


 そして思うのは『私も研究をしたい』ということ。自分で東京に残るために転属を願い出たのにこんなにも未練を残す私がいる。報告書を読みながら、自分が研究をしているのではないかとさえ錯覚するほどの精密さに夢中になって報告書を読み耽った。

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