初恋 二度目の恋…最後の恋

言葉

 規定の忌引よりも一日多くの休みを取って私は出社することにした。葬式まで終わってしまうとどこか自分の中で空虚さを感じ、一日だけ自分を取り戻すために時間を使わせて貰った。でも、何をしたというでもなく、休日に自分の部屋で過ごすのと全く同じ。家事をして、本を読んで時間を過ごしたのだった。


 でも、このいつもの休日と同じ時間というのが思ったよりも良かった。本を読みながら、ふと、お祖母ちゃんのことを思い出す。悲しくて仕方ないと思うけど、この悲しみは時間しか癒してくれないのも知っていた。


 私が営業一課の営業室に入ると、皆の視線が私に集まってくる。仕事で忙しいのに、私を見つめる瞳はみんな優しかった。


「おはようございます。祖母のお通夜に来ていただきありがとうございました」



「おはよう」
「おはよう。坂上ちゃん」
「おはよう。坂上さん」
「おはよう」
「おはよう。坂上ちゃん」


 私はみんなに頭を下げてから高見主任の机の前に行くと高見主任は私の方を見て穏やかに微笑んだ。


「もういいのか?」


「はい。祖母の通夜葬儀には参列を頂きありがとうございました。お蔭様で無事に終わりました」


 高見主任は課を代表して葬儀にも参列してくれていた。お通夜だけだけでも申し訳ないのに、昼に行った葬儀にまで参列してくれていた。忙しい中、参列して貰えるとは思ってなかった。


「今日からまた忙しくなるが頑張ってほしい。今日は一日書類の整理をしながらあまり無理をしないように」

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