初恋　二度目の恋…最後の恋
「　営業室で堂々と誘う折戸さんは変に隠し立てなんかしないタイプだ。そんな折戸さんに小林さんは何も言わない。いつもなら何か言ってくるのに、今日はそれさえもない。私たちに視線を投げる小林さんに、折戸さんは綺麗な笑顔を浮かべて見つめる。そして、言葉を紡ぐ。

「悪いな。蒼空も今度、連れて行くから。今日は美羽ちゃんとのデート」



　言葉には色々な意味があるけど、折戸さんの言葉はニュアンスを含みすぎているような気がした。特に小林さんを大事に思う気持ちは深いはずなのに今日に限っては見えない壁を感じさせる。でも、折戸さんはいつも通りに綺麗な顔に微笑みを浮かべている。


「別に何とも思ってないですよ」

「ならいいけど。じゃあな」


　そういうと折戸さんはまた微笑みを残してから営業室を後にした。私もその後をついて出ると、そこには立ち止まった折戸さんがいる。振り返ると私の方を見つめた。


「蒼空がいた方が良かった？」


「いえ。大丈夫です」


「今度は蒼空も一緒に誘うから。でも、今日はちょっと話したいし」


「はい」


　小林さんがいると確かに楽しい。一緒にいると心がフワッと温かくなるのを感じる。無邪気な笑顔がとっても好きだと思う。だけど、必ず居ないといけないというわけでもない。でも、折戸さんと一緒に出掛ける時は小林さんも一緒の時が多かったから、小林さんがいないのに違和感を覚える私がいた。それに折戸さんの話とはなんだろう。


　転勤が発表された夜に聞く話はどんなことかは想像できなかった。


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