初恋 二度目の恋…最後の恋
第二章

普通が分からない

 高見主任との同行はその後も続いた。その間に私は色々な営業方法があることを知る。考えてみれば、相手があることだから、同じでいい訳ない。相手の様子を見ながら商談を進めていく高見主任はさすが本社営業一課だと思う。


 でも、私はというとまだ何も上手に出来なくて、高見主任の横でただ相手を見ながら微笑むだけ。でも、研究所にいたから、商品の事が詳しく分かるのはいい。数値までキッチリと押さえた高見主任の見識の広さには驚く。どこでこれだけの知識を習得したのだろう。


 研究所から挙げられるレポートだけではなくもっと深いことまで知っている。



 それに高見主任は穏やかな表情を浮かべ、どんな話を振られても上手い具合に話を繋ぐ。社の商品はもちろんのこと、経済、財政、税務。スポーツやテレビ番組まで多岐に渡る。知らないことはないのだろうかと思うほど…。


 営業室でも暇さえあれば新聞や文献に目を通し、仕事の合間にレポートまでも目を通しているのだろう。私は自分の目の前にある仕事でさえも満足に出来ないのにと歯痒くも思う。


 真摯な姿を尊敬する。
 そして、高見主任の桁外れの成績をコンスタントに上げるのを納得した。


 私も高見主任の営業の呼吸に沿って必要な書類やパンフレットを出す事が出来るようになっていた。まだ相手の方と直接話すことはなかったが、頷きながら聞くということの意味を覚えた。


 私は今まで研究所にばかりいたので、毎日違う人に会うというのは刺激であり、緊張の連続だった。


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