初恋 二度目の恋…最後の恋
 二週間が過ぎた頃のことだった。


 営業一課に来て、二週間。私は随分慣れたと思う。毎日の仕事が少しずつ慣れてくると同時にやりがいも感じていた。


 午前中は高見主任に同行し、昼からは帰ってきた一課の人の持って帰ってきた情報をパソコンに打ち込んでいく。パソコンは元々使っていたので、苦も無く打ち込みをする。慣れてしまえば、さほどの時間も掛からずに行える。
 
 
 今日も一日高見主任と一緒に同行して、その結果をパソコンに打ち込んでいるところだった。さっき、淹れたばかりのコーヒーは少し煮詰まったのか私の口には少しだけ苦い。


 そんな私に降り注ぐ言葉は思ってもみないことだった。


「明日からは折戸と小林に同行するように。特に小林はまだ本格的な知識が足りてないので頼む」


 折戸さんや小林さんと同行するのが嫌なのではない。ただ、自分に自信はない。高見主任の話を聞きながら、パンフレットを用意し、その状況を読みながら、高見主任に振られた言葉に応えるだけ。そんな二週間を過ごしていた。自分で説明をしたわけでもない。



「まだ自信がないです」


 私がそう言うと高見主任はフッと笑うと、私の瞳をしっかりと見つめた。吸い込まれそうなほどの澄んだ瞳は優しさに包まれていて、形のいい唇から紡がれる言葉は穏やかだった。そんなに自信を持っていうほどの理由が私には分からない。


「坂上さんなら大丈夫だと思っているから、言っているんだよ。それに折戸も小林も素人じゃない。本社営業一課にいる人間を信じていい」


 私は何が出来るかわからないけれども、高見主任の言葉に素直に頷いた。


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