強引男子にご用心!
総務部の華子さん
会社員と言うものは難しい。
派手でも目立つし、地味すぎても目立つ。
社会性と言うものを当然求められ、それは当たり前の常識。
そのさじ加減は難しいけれど、これでも結構上手に生きてきた……
はず。
「やだぁ。磯村さん。どこさわってるんですかぁ」
本当に、どこ触っているのでしょう?
ここは資料保管室であり、確かにあまり人はこないですけどね?
確かに、来ないですが、全く来ない訳でもなくてですね!
部長に頼まれて、ファイルを探していたら、唐突に開いたドア。
そしてすぐに始まったイケないこと。
ど、どうしよう。
どど、どうしよう。
振り返ってはいけない。
だけれど、段ボールの乗った棚のすぐ後ろでは、すでに何かが始まりだしてない?
困る。
困った。
逃げようにもここは資料保管室の奥であり、出入口は1つ。
1つと言うことは、逃げるためには彼らの前を通らないといけないわけで……
でも、でも、ただ無言で聞いていたらノゾキじゃない?
ノゾキなんてするつもりは無くてもノゾキになってしまうわ。
止めなくちゃ。
でも、どうやって……
と、思った瞬間くしゃみがでた。
……ギャグだわ~。
「だ、だれかいるの!?」
上擦った女性の声、それからバタバタとした足音と、ドアが開いて閉まる音。
とりあえず、助かったのかしら?
た、助かったのよね?
ほっと胸を撫で下ろしたら、微かにした靴音。
「……あんたも、つくづく間が悪いよな」
少しだけ乱れた前髪。
外されたネクタイに、ワイシャツのボタン。
若干イラついたような視線は、決して私のせいじゃない。
「お互い様でしょう。そちらが後から入ってきたんですからね」
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