強引男子にご用心!
少し変わった



臨時役員会の為、大慌てで会場設営。

10階の会議室に出張中。

秘書課の男性陣も手伝ってくれているし、仕事は早い早い。

少し埃があった窓際を拭いていたら、いきなり声をかけられた。

「お誕生日、おめでとうございます。伊原さん」

「はい?」


声をかけて来たのは葛西さんで、珍しく眼鏡なんてかけていて、インテリ風味倍増していた彼。

回りの空気が固まったのは、気のせいじゃないと思う。

あの葛西氏。
秘書課で、社長令息で、無駄口叩かない、あの葛西さんが、

「た、誕生日?」

「ええ。招待頂きました。ワインはあるとの事ですが、何か持参した方がいいかと」

「え? ああ。磯村さんから連絡ありましたか」

そう言えば、葛西さんと山本さんに声かけるって言ってたな。


「はい。手料理をご馳走くださると伺いましたので、僕も何か酒でも持参します」

社長令息の持参のお酒ですか?

「め、滅相もない。お気遣いだけで結構です」

それに手料理って言ってもピザだし。

後は水瀬のリクエストでおでんだし。

後は適当に作るだけで……。


「男性はそういう訳にはいかないのが常ですから」

「…………」


そんなマイ常識捨ててしまえ。

それよりも、この凍りついた空気をどうしてくれよう。


「……葛西さん」

「はい」

「時間がありませんから、適当にお願いします」

「解りました」

礼儀正しく一礼して、葛西さんは秘書課の皆様の方に歩いていった。


「……先輩。葛西さんと会話するような仲でしたかぁ?」

「まさかでしょ? 私じゃなくて、磯村さんがお友達らしいけれど」

「なるほどですねぇ。磯村さんて、人脈広そう」

確かにね。

「でも、これってヤバイですよねぇ?」

「そう思う?」

「葛西ファンは陰険ですよ~?」

「……面倒くさいわね」

また、取り囲まれるとかは勘弁してほしいわぁ。
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