強引男子にご用心!
「ものすごーく、今更な気がするんだけど」
「いやぁ。お前、俺にポンポン言い返してたじゃねぇか」
うーん?
「……私、基本的に話しかけられない限り、話すことはなかったと思うんだけど」
「そうか?」
「それに、無言でいたら怒ってたじゃない」
「別に怒ってねぇよ。イライラはしてただろうけど」
「それって、どう違うの?」
「解りきった事に対して、怒るわけにもいかねぇだろうが」
「え。う、うん?」
「お前、イラつかせないと本音しゃべらねぇし」
「そんなことはないわよ」
「そんなことはないかもしれないが、本音言うまではかなりかかるのも事実だろうが」
それは確かかもしれない。
考えていたら、車がいつの間にか走り出していた事に気がついた。
「…………」
「……んだよ」
ちらっと視線が合って、思わず笑ってしまう。
磯村さんの眉がひょいっと上がり、信号が赤になると振り向かれた。
「何だよ」
「うん。何て言うか、ありがとう?」
たぶん、実家からわざわざ自分の車を持ってきてもらったんだよね。
混んだ電車にも、タクシーにも、私が拒否反応示すから。
何だか、照れくさいと言うか……
いや、照れくさいよね。
「疑問系かよ」
「磯村さんだって、素直にお礼言わせてくれないじゃない」
「礼を言われる為にやってんじゃねーもん」
じゃねーもん、と来ましたか。
「まぁ、気分はいいな」
「うん」
「毎回は無理だぞ?」
「うん。解ってる。でも、急にどうして?」
「んー?」
「私は別に出掛けなくてもいいのに」
「そうだなぁ。ベタベタしてもいいなら、それでもいいぞ?」
「は…………」
ベタベタしても?
「俺も男だしなぁ。最近、触れるようになったし、欲がでるもんだよな」
「……磯村さんて、ばか正直だよね」
「それほどでも?」
ほめてないし。
まったく褒めてないからね?