強引男子にご用心!
そう言えば、磯村さんてエロ鬼畜だったなぁ。
最近は、鬼畜部分がなりを潜めていただけで忘れてた。
忘れていたけど、どうすれと?
だいたい、その時は言わないって言ったじゃないか。
言われたら、どうすればいいかなんて解らないし、パニックになるよ?
間違いない。
間違いなくパニックになる。
パニックになって……
経験的に暴走する気がする。
暴走して、突っ走って。
えーと、どうなるんだろうか?
どうなるんだろう。
解れば悩むことなんてないし、考える事なんてないよね。
考えなければいいのかもしれないけれど、考えてしまうのも人間で。
悩んでいるけど、何を悩めばいいのかもあやふやと言うか。
「華子?」
「はい?」
「着いたから、さっさと降りろ」
「え。どこに?」
「……お前、あまり人任せにしてっと、いつか拉致られんぞ?」
「そんなことをするのは磯村さんくらいだから」
「おー……捨てがたいな」
何がよ。
軽く睨んで車を降りると、磯村さんの向こう側にお兄さんと、兄嫁さんらしきが見えた。
「あー……気にするな。向こうもアウトレットに用事があったらしい」
「へぇ」
だとするとここは、アウトレットか。
歩き出しながら、楽しそうな磯村さんを見上げる。
「何か欲しいの?」
「何かあればな」
「男の人も目的なくショッピングするの?」
「いや。人によるんじゃねぇの? お前は欲しいもんあるか?」
「新しいタオルが欲しいくらいかな」
「……何か探すか」
そう言いながら、大きな建物に入っていく。
普段の買い物は近所で済ませてしまうから、こういう大型商業施設は久しぶり。
都市部まで行けば、ブランド品も買えるだろうけど、そこまでが苦行だし。
と、言っても、給料の殆どは貯金や貯蓄にまわしてしまうんだけどね。
「なぁ」
「はい?」
「欲しいもんは本気でタオル?」
「うん。だいぶ古くなってきたし、今日は持ち合わせがあんまりないし」
「俺に買わせるとか、そういう発想はないわけ?」
「…………え」
その発想はなかったわ。