強引男子にご用心!
あの男は、絶対に面白がっている。
面白がって、構ってくるから大迷惑。
大迷惑だけど、面と向かってそれを伝えたところで、それすらも面白がるような気がする。
そういう時には無視が一番……なんだけれど。
経理部から予算案の書類を受け取り、総務部に戻ると、当の本人がまた顔を出していた。
入り口近くの後輩と、楽しそうに話をしている。
……何だか疲れました。
確かに小学生の頃の愛読書は恋愛漫画だったわ。
そして、中学生の頃の愛読書は恋愛小説だったわよ。
自分の特殊な潔癖症も、治ると信じていたあの頃。
素敵な恋人ができれば……なんて、恋に恋をしていたあの頃。
あの頃に比べれば、大分ましになった潔癖症だけど、まだまだ健在。
諦めて将来を考え始めた時に、どうして恋愛いざこざ抱えてそうな大迷惑がウロチョロするようになったのか……
私、前世の行いでも悪かったのだろうか?
「伊原さん。サインもらえますか?」
クリップボードに貼られた社内通達の予定時間とその割り振り。
それから差し出されたボールペン。
うん。大丈夫じゃないかな。
胸ポケットから自分のボールペンを引き出してサイン。
「後で主任のサインも貰っておいて」
「解りました」
ツカツカ課長に近づき、経理から受け取った書類をデスクに置く。
「今月の予算変更案だそうです」
「ええ? また削減か~」
世の中も色々大変だ。