強引男子にご用心!

「女って、プレゼント喜ぶだろ」

モテ男の言い分らしい。

「そりゃ、嬉しいけれど」

「ねだってもいいぞ?」

「なんで」

「なんでってなんで」

「何してるんだお前ら」

後ろを歩いていたらしい、磯村お兄さんが複雑な顔で立っていた。

その隣にいるのは兄嫁さんらしい。
色白で、頬はピンクで、眼はぱちぱちと大きくて、可愛らしい。

可愛いいなぁ。
お人形さんみたい。


「……華」

「はい?」

返事をした途端に頭を抱え込まれた。

「え。ちょ……まっ!」

「駄目か?」

「や。大丈夫だけど、いきなり何」

「まぁ、行くか」

抱え込まれたまま歩き出すから、引きずられるようにして歩く。

「磯村さん。離して離して」

「気持ち悪くなったか?」

「ならないけど、歩きにくい」

今更だけど、磯村さんて背が高いから、抱えられて歩かれると、ちょっと大変だし。

「本当に平気になってきたなぁ」

「慣れの問題かしら」

「ふーん?」

ふーん?

「じゃあ、キスも慣れろ」

「それとこれとは話が別。全く別々」

離してもらって、ブラブラ歩きながら、まわりを見回して広い通路に安心する。

入っているお店も結構広々と商品を陳列しているし、人とすれ違ってもスペースがあったり。

ショッピングを楽しくするなんて、久しぶり。

磯村さんはインテリア家具を見ながら何故かクッションを買い、私は私でタオルを買って、またブラブラと歩いては買い物して……


「華子。ちょっと来い」

「うん?」

磯村さんが見ていたのは、何かのショーケース。

隣のお店の雑貨を置いて、近づいてみてギョッとした。

「磯村さん。ここ宝石屋さん」

「……宝石屋さんて、あまり言わねぇだろ」

手を捕まれて、そのまま店に入っていくからますます慌てる。

小物雑貨の隣に、ジュエリーショップがあるなんて、侮りがたしアウトレット。

「結局、誕生日プレゼント何もやっていしな」

「いや。だから、気持ちだけでいいってば」

「大丈夫。俺は真面目な営業マンだから」

「意味が解らないし。まったくもってわか……」

店員さんの笑顔に、言葉が小さくなっていく。

……恥ずかしいです。はい。


「何がいい?」

って、聞いているけど、視線はショーケースの中身で。

あーもー……好きにしてください、好きに。

と言うか、手を離してください、手をさぁ。


「すみません。これ見せてもらえますか?」

そう言ったのは、ショーケースに指輪が並ぶ一角で。

「はぁ!?」

素頓狂な声をあげた私を、磯村さんはこれまた目を丸くして見下ろした。
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