強引男子にご用心!

恐らく真っ赤であろう顔。

それを覗き込まれて、磯村さんと目があった。

「そんなでも違うって言うのが華だよな?」

「……私は天の邪鬼じゃない」

「いや? かなりの確率で天の邪鬼だろうが」

違うもの。私は私の中では真っ当な事を言っているもの。

「で? なま物は食えるか?」

「熱の通ったモノなら食べられる」

「なんで?」

「だって。素手で触ってそのままのものは食べられない……です」

「なるほど」


納得されて、何故か4人でパスタ屋さんに入ることになった。

「ここなら平気ですか?」

端の席、4人掛けのテーブルの、私の隣には磯村さん。

店内も広々していて、お客さんもまだまばらな時間帯。

目の前の兄嫁さんが、にっこりと微笑んだ。

「達哉くんの隣は大丈夫なの?」

「だいぶ慣れました」

「慣れの問題なんです?」

「帰ったらシャワー浴びれば良いって開き直りました」

「家計は大変そう」

主婦らしい意見にへらっと笑う。

「菌に囲まれる生活考えたら、それくらい大丈夫です」

「菌…………」

目を丸くされたけど、すぐににっこりと微笑む兄嫁さんは可愛らしい。

人妻だけど、女の子って感じがする。

さっきは顔しか見てなかったけど、髪の毛もゆるふわカールで可愛らしいし、ニコニコと若々しい……


って、言うか、若いよね。


これでも女で29年生きてないわ。

若い子のお肌はピチピチしていて、弾力があって、すべすべしているのよ。

きっと、触り心地も良いんだろうな。

私はどちらかと言うと、みずみずしさはないし、素っぴんだし。

化粧水くらいは使うけど、そろそろカサカサする年齢。

カサカサ、カサカサ、枯れていくんだろうと思っていたな。


「はなちゃん、大人しいねぇ」

磯村兄の言葉に、磯村さんが吹き出した。

「まさかだろ~? こいつが大人しかったら……っ」

足を思いきり踏んだら、磯村さんがとても痛そうな顔をした。

それから涙目で睨まれる。


「……お前、なぁ」

「何よ」

「いい度胸じゃねぇか」

「人間、ある程度の度胸はもたないと」

「んじゃ、触られても動じないくらいの度胸もてや」

「それとこれとは話が別」

「あのなぁ!」

「はなちゃんが大人しくないのも、お前らが仲がいいのも解ったから、なに食うか決めれよな?」

お兄さんに言われて、お互いに睨みあってそっぽを向いた。


「何を食うんだ」

メニューを見ている磯村さんをちらっと見る。

「海老」

「ねぇな」

「パスタ屋さんでそんなことあるわけないでしょう!」

「まぁな。海老のトマトソースパスタと、子海老の和風パスタがある」

「あ。和風で」

「トマトソースな。お前少し太れ」

「どうして……」

太らなければいけない?

「触るからに決まってんだろうが」

「…………」


き、決まってません──────!


「あー……。だから、本当に仲がいいのは解ったから、頼むから俺たちもいることを思い出してくれ?」

お兄さんに言われて、また顔を赤らめた。
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