強引男子にご用心!

恥ずかしがりながらも、それぞれ食べたいものを注文して────私はもちろん子海老の和風パスタを……食べながら最近の事について話始める。

「でも、達哉とよく付き合うようになったねぇ、はなちゃん」

「はあ」

付き合うようになったいきさつは……何だかある意味で、挙げ足とられた感じでだったけれど。

「何にせよ良かったよ。やっぱり弟だからね。たまに心配になるし」

お兄さんはいい人なんだなぁ。

磯村さんと似たような顔をしているけど、ニコニコニコニコ笑顔で……

磯村さん、たまにしか素で笑ってくれないし、その他の笑顔はどす黒い暗黒漂うし。


何だか変な感じ。

似たような顔が、片や悪魔で片や天使に見える。

その天使が奥さんの頬についたミートソースを、親指で拭ってる。



「いい人そう……」

ぽつりと呟けば、

「あ?」

濁点がつきそうな不機嫌な声が隣から聞こえた。


ヤバイ。隣が見れなくなった。


「もう一回、言ってみ?」

「遠慮しておきます」

「いいから。気にせず言え?」


いやいやいやいや。
気にします。気にさせてください。
気になりますから。

自分だって気になったから聞き返してきてるくせに────!


「達哉くんは、相変わらずだねぇ?」

そう言って、兄嫁さんがにっこりと磯村さんを見た。

「昔から女の子に意地悪してばかりなんだから」

「……あんたに言われたくねぇよ」

「泣かせてばかりいたら、嫌われちゃうよ?」

「……これくらいで華子が泣くかよ」


……まぁ、泣かないけれど。


微妙な雰囲気の変化に、磯村さんを見た。

何だか、何がって言うか……

ふて腐れたような、忌々しそうな。

初めて見る、なんとも複雑そうな顔。


「……え、と」

「何だよ」

睨まれたけど。

「磯村さんが鬼畜なのは知ってるし」

「は……?」

「ただの感想なんだから、気にしないで?」

考えるように目を細め、それから小さくふっと笑った。

「お前、素直に好きとか言えないわけ?」

はぁ?

「意味がわからないから」

「じゃ、嫌いなのかよ」

「そんなわけがないでしょう!?」

好きでもない人間と付き合えるほど、余裕のある人生送っていないわよ!

「このツンデレ女」

「貴方に言われたくないわ!」

「え!? 達哉デレるの!?」

「まさか、達哉くんが……」

夫妻が目を丸くしてびっくりしてる。

「…………」

兄弟に驚かれて引かれている磯村さんて、どんだけなの?
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