強引男子にご用心!

考えないようにしてる。

考えないようにしているけれど、どこか頭の片隅で考えていたコト。

葛西さんが言っていた“立ち直った”原因。

違うかな?
違うのかも知れないけれど……

私は、あんな表情の磯村さんは見たことない。

あんな、複雑な顔。

そうして見てみると、磯村さんから兄嫁さんに話しかけないよね?

私は兄嫁なんていないから、よくわからないけれど。

話しかけたら普通にするよね?

今までの接し方を見ていた訳じゃないから、ハッキリとは言えないけど。

幼馴染みで。

磯村兄弟とはお隣さんで。

小さい頃から遊んでいた。

潔癖症だって知ってるのに、磯村さんにいじめられて。

泣かないように頑張っても、よく泣かされていた兄嫁さん。

意地っ張りな女の人は、思いきり泣かせたいんだものね?


意地っ張りで、潔癖症で……

そんな女性がタイプらしい磯村さん。


もやもやする。

何だかとってももやもやする。

そしてイライラする。


「……なんだ、メチャクチャ不機嫌そうな面して」

いつの間にか磯村さんが隣にいて、不思議そうにしてるから、

「考え事」

「……あ、そう」

「そうなの」

「何を? 何か変な事でも言われたか?」

何かって……。

そうね。
特に変なことを言われたわけじゃない。

たぶん、悪気はなくて。
たぶん、善意から出た言葉なんだろうな。

それは解る。

解るから……


「華子?」

「なに」

「お前って、イライラ考え事しながらも返事はすんだな」

「しなかったら怒るくせに」

じろりと睨んだら、磯村さんは小さく苦笑した。

「まぁな」

「考え事してるって言ってるのに」

「いや? なんかろくなこと考えていなさそうだったから」

「………………」

鋭いな。

確かにろくな事は考えていないよね。

どちらかと言うと、後ろ向きな事を考えてる。


考えてしまうのが人間でしょう?

だけど……


じっと見下ろしてくる磯村さんに、小さく笑った。
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