強引男子にご用心!

それから自分の席に戻ろうとして、手を振っている磯村さんと、遠慮がちに手を振っている後輩。

「……何かありましたか」

もじもじしている後輩を見て、それから磯村さんを睨む。

「いえ。今日は急な変更に対処してもらってありがとうございました」

「……会議室の件ですか。管理も総務の仕事ですので、お気になさらず」

「伊原さんはそう言うと思いましたが、今度、営業部と総務部で飲みに行きませんか?」

「…………」

期待に満ちた後輩の視線と、胡散臭い爽やかな笑顔の磯村さん。

まぁ、良いんじゃない?

「皆、飲み会なら喜ぶと思います」

「良かった。では、伊原さんも参加されますよね?」

「私は……お酒の席は苦手ですので」

なに、何を企んでいるの?

「残念。でしたら、今度食事でもいかがです?」

「致しません」

「じゃ、伊原さんは別口でお礼しますね」

……ん?

何のお礼? と言うか、何が別口で?

頭にクエスチョンが生えたけれど、そのままスルーされて、磯村さんは後輩と楽しそうに話始めた。

何だろうか、何かが腑に落ちない。


「お礼兼ねての飲み会じゃなく、普通に飲み会にしますか」

「営業部の方となら、合コンでもいいですよ~?」

「伊原さんいないなら、それでもいいですね」

「はい。皆喜びます」

「…………」


何か、馬鹿にされた気がする。

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