強引男子にご用心!
夜道のお散歩
「伊原さん。4番に営業から」
書類を整理していたら、舞い込む内線。
営業の事務からかな。
『どうも。伊原さん?』
この声は天敵だ。
「磯村さん。いい加減、無意味に名指しするの止して下さいませんか?」
『伊原さん、話しやすいし』
そんなことはない。
そんな事は言われた事もないし、心掛けてもいない。
「ご用件はなんでしょうか」
『明日の15時から17時くらいまでで、会議室に空きありますか?』
「明日の……15時から、何名ですか?」
使用表を引き寄せながら、空いている会議室をチェック。
『2、3人。外部者はいない』
「A会議室が空いてます」
『では、そこ押さえて下さい』
「承ります。鍵は……」
『取りに行きます。じゃ、また』
「会議室などの事でしたら、他の職員でも対応可能ですから、次回からは名指しは……」
『でも、今月の使用管理者は伊原さんでしょう?』
「そうですが」
『それならやっぱり伊原さんに話をした方が早い。じゃ、また』
そう言って切れた内線を睨み付ける。
確かに、今月の会議室の管理者は私だけどね。
誰だ、あの男にリークしたのは。
まぁ、機密情報でもなんでもないからいいんだけどね。
営業部はスタンスが軽いし、色んなところと知り合いなんだろうし。
受話器を拭きながら、溜め息をついた。