強引男子にご用心!
「何なんだか……」
ポソリと呟いたら、隣の席の後輩が飛び上がった気がしたけどスルーしよう。
私だって人間だもの、たまには独り言も言いますよ。
いいたくなるじゃない。
毎日毎日、近寄っては来ないけれど、一度はかかってくる内線電話。
磯村さんの取り巻きには睨まれ、総務部では好奇心いっぱいの後輩にヒソヒソと噂される。
侮っていたわよ磯村さん。
貴方、かなり有名人。
だからと言って、業務は山あり谷ありで有る訳で、仕事は待ってはくれないし。
午前中は部長会。14時からは役員会。
会議室回すのは業務の一部で、全てじゃないし、イライラは募るばかり。
あの男、人の事オモチャかなにかだと思ってない?
確かに、面白いのかも知れないわ。
ある意味特殊な症状よね。
解っているわよ。解っていてもどうにもならないのよ。
どうにもならないのよ。
どうすればいいのよ。
「伊原さん。去年の仕入れ伝票の写しって資料保管室に移したんでしょうか?」
内線電話を片手で押さえ、後輩の一人が首を傾げる。
「去年の? 先月末に移動しましたが、使用するの?」
「経理から探して欲しいらしくて」
「解りました。直接持っていきます」
「解りました。お伝えしておきます」
立ち上がり、総務部を出るとツカツカと廊下を歩く。
ロッカールームに立ち寄って、マスクと新しい手袋を手に取ると資料保管室に向かった。