強引男子にご用心!
「……やっぱりか」
「何がやっぱりですか」
「そのツンケンしてる口調は人避けか」
「な……っ」
じっと見つめられて、ぐっと黙り混む。
黙り混んだら、ふっと笑われた。
「まぁ、そこまでツンケンしてたら、馴れ馴れしく寄ってくる奴もいなさそうだしな? 見てたらすぐ解る」
「解らなくていいです!」
「まぁ、取っ掛かりでもなきゃ、解らねぇだろうけど」
取っ掛かり?
「ゴーグルに三角巾にマスクに手袋。大掃除かと思った」
ニヤニヤ笑うからそっぽを向く。
ひ、人前ではやりませんから。
「それを惜しげもなく捨てて、キスくらいで白目むく、近寄ったら逃げる。対人恐怖症じゃないなら、潔癖症だろうと思ったらそうだったろ」
「す、すみません」
「しょうがねぇし。まぁ……少し歩くぞ」
歩きだした磯村さんに並んでついていきながら、ふと彼を見上げた。
身長も高いし、整った顔もしてるし、営業部の成績もトップクラスだし、普段の爽やか笑顔ならさぞやモテるだろうな。
取り巻きはいるし、会社の中でいちゃつくのはどうかと思うし、鬼畜っぽいし、口は悪いけれど、それだけなら悪評しか立たないし。
女性の噂は絶えなかったけど、磯村さんの悪い噂って逆に言うとそれだけだし。
人をからかってオモチャにするのもどうかと思うけれど、悪い人じゃないのかもしれない。