強引男子にご用心!
きれい好きは良いけれど
「……ありますか?」
そう言いながら、総務部のドアを開けたのは企画室の人。
言いながら入ってくるから、最初の言葉が聞こえなくて皆がポカンと彼を見る。
「え……あれ?」
何故か皆の視線を集め、顔を赤くしている彼を後ろから誰かが叩いた。
「……って。何す……」
「伊原さん。A4のコピー用紙。企画室に欲しいそうです」
出ましたね。
鬼畜タラシの営業マン。
目を細めてドアを睨むと、彼の後ろからひょっこり顔をだしたのはやっぱり磯村さん。
「ですから磯村さん。名指ししなくてもいいですと、何度も申し上げてます」
「いや、伊原さん大体把握されてますから……話が早いでしょう?」
貴方のソレは単なる嫌がらせでしょう。
ムッとしながらも、コピー用紙の束を見て、それから入口近くの後輩を見る。
「伝票記入して頂いて、私は補充してくるから」
デスクの引き出しから軍手を取りだし、備品倉庫の鍵と台車を引いてドアに向かう。
「すみません。少々お待ちいただけますか?」
「あ。一緒に取りに行きますよ」
受け取った伝票にサインをしてから、彼は振り向く。
まぁ、そっちの方が早いよね。
て、言うか。
「磯村さん。避けて頂けませんか?」
何を意地悪そうな笑顔で、ニコニコ人の行く手を阻んでいるのよ。
「すみません」
なんて、しおらしく避けてくれたけど。
「お前、廊下から頼み始めてたぞ」
「え。ああ、それであの反応だったんだ」
何故、企画室の人と一緒について来るんでしょうかね?