強引男子にご用心!
「磯村さんと山本さんは、仲がいいんですか?」
磯村さん、外面良さそうなのに、廊下に誰も居なくなったら途端に柄が悪くなったよね。
「大学から一緒だし。企画室と合同でコンペも多いしな」
「そうなんですね。友達いたんですね」
「お前、俺のことバカにしてンの?」
いや。
柄悪すぎてなんとも言えないですが。
「磯村さんて32歳でしたよね」
「32だがなんだ」
「いえ。少し疑問に思ったもので」
普通、32歳にもなって、こんなチンピラみたいな言葉づかいの人も少ないと思うんですよね。
「ああ、伊原さん。磯村は男同士の仲間内だともっと酷いよ」
「なんでお前はそーゆートコだけ察しがいいんだよ」
磯村さんと山本さんの会話を聞き流しながら、備品倉庫の鍵を開けた。
……ここは空調効いているから、あまりホコリはひどくないけれど。
マスク持ってくれば良かったかな。
でも、マスク姿はあまり人には見せたくないよね。
顔をしかめていると、ズカズカと磯村さんが中に入り、A4のコピー用紙の束を山本さんに渡して追い払う。
「ありがとう」
そう言って、にこやかに去っていく山本さんをぼんやりと見送った。
「え、得難い人ですね」
用事のあった人が帰り、用事のないはずの磯村さんが残っている事を、なんら不思議にも思わないのだろうか。
「アイツに常識は通じねぇよ。んで、何を補充するんだ」
「A4と、B5……5束づつ、です」
「はいはい」
それぞれ、台車に乗せてもらって、磯村さんの顔を眺める。
……この人は、本当に何しに来たんだろう。
「…………」
「……ありがと、ございます」