強引男子にご用心!
そして、気づけば医務室だった。
白い天井に、見慣れた女医の姿。
「ああ。起きたの?華子さん」
艶然と微笑む女医は、水瀬と言う。
私の唯一無二の親友。
「で。磯村さんに抱えられてきたけれど、何があったの?」
何が……
何がってさ。
「は、吐きそう」
「え。やだやだ! ゴミ箱」
ゴミ箱を渡されてじっとゴミ箱を眺める。
胃はムカムカするし口の中は気持ち悪い。
だけど、お昼前に吐けるようなものもなくて、溜め息をついた。
「うがい薬を下さい」
「はいはい。こちらへどうぞ」
うがい薬を受け取って、ガラガラとうがいをする私に、水瀬は肩を竦める。
「何? 磯村さんに肩でも叩かれた? それとも手でも捕まれた? あの人、女関係派手だからねぇ」
手や肩くらいなら、多少は我慢できる。
我慢できるけど……
「……キ、キスされた」
「……あんたの潔癖症には、きつい仕打ちをされたわね」
「きつすぎる……」
そう。
私は潔癖症。
昔ほどでは無くなったけど、未だに握手も苦手だし、ある程度の距離がないと脚が竦むくらいには潔癖症。
満員電車には乗れないから、いつも自転車通勤。
規則正しく。清潔な生活がモットー。
なのに、あの男はキスしてきた。
しかも舌も入れてきた。
舌で口のなかかき回された──────!!
「まぁ。よくあんたにキスしてきたね」
「それは私もそう思う」