強引男子にご用心!

「バレたく無いんだろ?」

「え?」

「潔癖症。他の奴等に」

「え。あ……はい」

静かな視線を向けられて、なんとなくいたたまれなくて俯いた。


磯村さんにはバレたけれど。

あまり、人には知られたくない。


それはその通り。


潔癖症って、ある程度なら仕方ないかで済ませられるけれど、私は少しある程度を越えているから。

その自覚はあるから……。


知られると奇異の視線で見られる事も多いし、中には磯村さんとは違った意味合いで面白がる人もいる。

磯村さんみたいに、からかっては来るけれど、一定の距離を守ってくれる人なら良い。

だけど、そんな人ばかりじゃないのも知っている。

皆、社会人だし、まさか机に雑巾や土を入れてくる……なんて事はないだろうけれど、悪意でもなく、ただ面白がってそういう事をする人もいる。

大学生の頃はノート貸してね、なんて軽く言われて持っていかれ、返してもらっても触れなかった。

他の人なら簡単に出来る事が、私には出来ない。

自分で自分を守るためには、強くなるしかなかった。

他人の力を借りない、他人に力を貸さない。


だって……


だって、私の手だって汚れてる。

皆は気にならないかもしれないけれど、私の皮膚にも無数のバイ菌や細菌や雑菌があって、私の触れたものに移っていく。

移って、増殖して、そして……

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