強引男子にご用心!
「おい」
「…………」
「なんか言え」
「私……れてる」
「は?」
「私も、汚れてる……から。近づいてほしくないですし」
「はぁ?」
「だって、バイ菌も細菌もたくさんあるなら、私にだってある訳で、私がふれたら増えるじゃない」
「そりゃまぁ、そうだろうな」
呆れた様な声音に、磯村さんを睨む。
「だから、近づいて欲しくないのに、貴方どんどん近づいて来るし! ただ静かに余生を送りたいのに!」
そう思っているのに。
貴方実は優しいし。
優しくなんてされたくないし!
「余生……って、夢ねぇな」
「夢なんてないわよ! 好きな相手ですら、恐くて触れられなかったわよ! 好きな相手ですら恐いんだから、夢も希望もないわよ!」
「OK。とりあえず、あんたのトラウマに首突っ込んだのは解った」
「トラウマじゃなくて事実よ!」
「とりあえず、うるせぇ」
「うるさくて悪かったわね!」
言った瞬間、磯村さんの目が据わった。
ひやりとする視線。
だけど、ぞくりと熱量を感じさせる視線。
「……ても、気ぃ失ってんじゃねぇぞ」
「え?」
と、言った瞬間、眼鏡が外された。
無意識に後ろに下がると壁にぶつかった。
ぶつかって、軽い衝撃に息を吸い込む。
吸い込んだ瞬間、煙草の香りと重なった唇に目を見開いた。