強引男子にご用心!
衝動と衝撃
「伊原さ~ん。メールを送ったんでぇ、社内報のチェックお願いしま~す」
後輩の言葉づかいに顔を上げ、少しずり落ちた眼鏡を人差し指で上げる。
「語尾を伸ばさない。不愉快に思う人もいるから気を付けて」
「すいませーん。癖で~」
「外部の人の前では気を付けて頂戴」
「はーい」
「返事は“はい”よ」
「は……」
……無言になった後輩を見て、それから送信されたメールを開く。
社内報の管理は、今回私の割り当てじゃないんだけどな。
文章を追いながら文面に眉を潜める。
「会社内に不審者?」
「なんか、ブツブツ言ってる人が、社内の廊下歩いていたそうです~」
独り言に後輩が振り向く。
……きっとこの子、無頓着だな。
近づかないように気を付けよう。
「そう。気を付けなくてはいけないわね」
「おっかないですよね~」
「そうね。……文章に問題ないわ。流して下さい」
「はい!」
……やれば出来るのね。
そんな事を思いながら仕事を続けた。
世界はどんな時も回っている。
いつも通りを心掛ければ、いつも通りの生活を送っていける。
うん。平和だわ。
「伊原さん。5番に内線です」
「はい」
内線電話の受話器を持ち上げ5番を押す。
「替わりました。伊原です」
『伊原さん? プリンター直せます?』
天敵が磯村が出た。
最近、見かけないし内線呼び出しもなかったから少し油断してた。
と言いますか、何ですかその用件。
「プリンターは直せません。業者をよびますので型番を教えて頂けますか」
『ああ。ですよね。冗談です』
内線切っても問題ないかな。
半眼になりながら受話器を握りしめた。