強引男子にご用心!
「用件はなんでしょうか」
『ああ。23年度決算の報告書が必要で。経理に聞いたら総務に聞いて欲しいって言われまして』
「23年度決算報告書……お待ち下さい」
引き出しからファイルを取り出して、経理から保管を委託された件を視線で追う。
「ああ、総務部管理になってますね。すぐ必要でしょうか?」
『あるなら取りに行きます』
23年度か。
資料保管室のキャビネットの中だな。
すぐに来られても渡せない。
私でも探すレベルの古い資料になる。
「30分程度時間を下さい。後程お届けしますので」
『伊原さんが来るの?』
後輩に持っていかせよう。
「後程、お届けします」
言うだけ言って、内線を切った。
「席外します。在庫管理表……任せても問題ないかしら?」
後輩達を見ながら言うと、
「共有ファイルに入っているものなら、去年やったことがあります」
「そう。じゃ、お願いします」
キャビネットの鍵を持って、ロッカールームに向かう。
手袋とマスクとゴーグルと三角巾。
人気のない区画に来ると完全防備してから資料保管室に入る。
キャビネットは、積み上がった段ボールの奥なんだよね。
まずは避けないと開けられない。
男の子に任せれば良かったかな?
そう思いつつ、ファイルの入った段ボールをずらし始める。