強引男子にご用心!
「案外、大丈夫だろ」
「…………」
だから何が。
何が大丈夫なのか考えて、戦慄した。
まさか?
まさかとは思うけれど、この間のキスの事を言ってるの?
あれが大丈夫かと言われれば……
大丈夫な訳がないじゃないの。
何を根拠に言っているんだ。
何の権利があって言っているんだ!
どちらかと言うとふざけないで頂戴!
と、心のなかで罵詈雑言を叫ぶ。
うん。
この間は変な風にネジが緩んで八つ当たりしたら、結果はあんな事になったわけだから……
そもそも言う必要は無かった。
不必要な事までわめいていた。
だからスルーしよう。
無言でいたら、
「無視かよ?」
「何を言えとおっしゃっているんですか」
「ファイル見つかったか?」
「恐らく、この辺りのはずなんですが」
「俺も手伝う?」
「……急いで探します」
急ぎなんだな。
きっと……
「あ、ありました」
見つけて振り返ると目の前に磯村さん。
真横には積み上がった段ボール。
真後ろにはキャビネット。
……どこかで見たぞ、この位置関係。
「なぁ?」
ニヤリと笑う磯村さんは、大魔王の雰囲気。
「なん、でしょうか?」
「あんたも学習しねぇなぁ」
「普通こんなことをする人はいません」
「俺は何回かしただろうが」
そうだけれど。
確かにそうだけど。
そんなことする人は、
「不真面目です」
「俺の本領発揮は営業だしな?」
「真面目に営業している姿が思い浮かびません」
「そりゃそうだ。あんたはまわりを見ないからな」
見ない……と、言われれば、見ない。
確かにそうかもしれない。