強引男子にご用心!

「案外、大丈夫だろ」

「…………」


だから何が。


何が大丈夫なのか考えて、戦慄した。


まさか?
まさかとは思うけれど、この間のキスの事を言ってるの?


あれが大丈夫かと言われれば……


大丈夫な訳がないじゃないの。

何を根拠に言っているんだ。
何の権利があって言っているんだ!
どちらかと言うとふざけないで頂戴!


と、心のなかで罵詈雑言を叫ぶ。


うん。

この間は変な風にネジが緩んで八つ当たりしたら、結果はあんな事になったわけだから……

そもそも言う必要は無かった。

不必要な事までわめいていた。

だからスルーしよう。

無言でいたら、


「無視かよ?」

「何を言えとおっしゃっているんですか」

「ファイル見つかったか?」

「恐らく、この辺りのはずなんですが」

「俺も手伝う?」

「……急いで探します」


急ぎなんだな。

きっと……

「あ、ありました」

見つけて振り返ると目の前に磯村さん。

真横には積み上がった段ボール。

真後ろにはキャビネット。


……どこかで見たぞ、この位置関係。


「なぁ?」

ニヤリと笑う磯村さんは、大魔王の雰囲気。

「なん、でしょうか?」

「あんたも学習しねぇなぁ」

「普通こんなことをする人はいません」

「俺は何回かしただろうが」


そうだけれど。

確かにそうだけど。


そんなことする人は、

「不真面目です」

「俺の本領発揮は営業だしな?」

「真面目に営業している姿が思い浮かびません」

「そりゃそうだ。あんたはまわりを見ないからな」

見ない……と、言われれば、見ない。

確かにそうかもしれない。

< 39 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop