強引男子にご用心!
自分で言うのもなんだけれど、キッチリとまとめられた髪。
目は悪くないけれど、顔の半分は隠れる古くさい黒縁眼鏡。
セクハラで、注意されながら馴れ馴れしく直されないように制服はキッチリ着込み。
他人のペンは借りないように、自分で何本も持ち歩き。
少しきつい口調を心掛けたら完璧。
立派な“お局様”には、あまり人は近寄って来なくなった。
なった……はず。
「お互いにもういい歳なんだし、いいんじゃないのぉ? あんた、このままだと一生独りだわよ」
「いいわよ。私はもう諦めてるから。仕事を頑張って貯蓄して、年金生活になっても困らないようにするんだ」
ソレでも、昔は努力した。
好きな人が出来て、手を繋げるようになって。
大丈夫だと思ったけれど……
大丈夫じゃなかった。
キス直前に彼を突飛ばし逃げ帰った。
そんなことを繰り返して、彼とは別れて……
「消毒終わり。仕事に戻るね」
「はいはい。頑張ってね~」
医務室を出て、それからまた戻る。
「ねぇ。私、ファイルを持っていなかった?」
「さあ? 運ばれて来たときには何も持っていなかったわよ? ああ、でも……」
濁された言葉に眉をしかめる。
磯村さんか……
「解った……」
「頑張って?」
頑張りたくないけれど、仕方がない。
営業部に寄って、磯村さんを捜す。