強引男子にご用心!

「あんた、休日はなにしてんの?」

「なに……って、関係ないで……」

……しょう。

とは、言えなかった。

じりっと磯村さんが近づいて来たから。

ニヤニヤしながら、近づいて……


「わ、私をいじめて楽しいですか」

「まぁな?」

「こ、肯定しますか普通」

「普通じゃねぇんだろ。きっと」


そうだね。

貴方は鬼畜だ。

間違いなく、やっぱり鬼畜だ。


持っていたファイルを突きつけて、押し付けたら磯村さんが少しよろめいた。

よろめいた隙間をすり抜けて、素早く棚の後ろに隠れる。


「……逃げ足早いよな」

すり抜けた時に少しだけスーツに触ってしまったけれど、あの状態でいるよりはマシ。

私だって、伊達に潔癖症を28年やってる訳じゃない。

制服は脱ぎたいけれど。
とても、脱ぎたいけれども、今脱ぐわけにはいかないくらいの社会性だって身に付いている。

それは大まかに、水瀬のおかげではあるけれど。

「キャビネット。鍵閉めさせて下さい」

「閉めればいいじゃん」

おいでおいでされてキリキリ歯を食いしばる。

遊ばれてる。
絶対遊ばれてる!

28にもなって、32の男に遊ばれてる!


何だか無性に腹立つ─────────!


「あんた、普通だよなぁ」

……って、何故そこでしみじみする。

「普通じゃいけないですか」

「いんや。似た者同士だなぁ、と思って」

誰と誰が。

私と貴方がですか?

まさかでしょ?


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