強引男子にご用心!

「なのに、お前普通だよな?」

普通って、普通じゃないのかなぁ。

違うのかしら。普通じゃないのかしら。

考えた事はなかったな。

そんな事を考えたことはない。

そういう意味では、私も普通じゃないのかもしれない。

たぶん普通を装うのがうまくなった。


「だからな?」

「はい?」

「あんたは面白い」

そう言って、磯村さんはキャビネットの前から避けてくれる。

「気を付けとけよ?」

「何をですか」

磯村さんと触れあわない様にしてすれ違い、キャビネットに鍵をかけて振り返る。


資料保管室のドアを開けながら、磯村さんはファイルをあげてふっと笑った。


「サンキューな」

「いえ。仕事ですから」

やっぱり小さく笑って、磯村さんは出ていった。


真面目な磯村さんは、どこか不思議だ。

三角巾とゴーグルを外しながら、なんとなく腕を組んだ。

何が大丈夫どう……と言う訳じゃないけれど。
どこか何かが。


……いいけれど。

と、考えて、

「そっか。明日は休みか」

洗濯して、掃除機かけて、後は買い出しかな。

私の休日なんてそんなもの。

休日に出掛けるとろくなことはないし。

後は水瀬と話すくらいかな。

そんな事を思いながら、資料保管室を後にした。

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