強引男子にご用心!

「それを普通だと思ってるだろ、お前」

……普通の事でしょう。

普通の事だと思うのね。

仕事なんだし、仕事である以上は捌いていくだけだし、捌ききれなければ割り振るし……分担するだけ。

それって当たり前の事じゃないの?

進捗率が悪ければ、誰かにしわ寄せが来るかもしれないけれど、気づけば課長や主任が割り振り直しているし。

「…………」


そうか、総務部も今忙しいのか。


だから、あんなに質問が飛び交うのか。


それからは無言で病院に向かい、磯村さんの手のひらは6針縫われていた。


……労災かな。


ぼんやりとそんな事を考えつつ、どこか何か……釈然としないというか、片隅にわだかまりが残る。

自分の部署の事なのに、違う部署の人にそんな事を言われたからか……

私は本当に、回りの事を見ていたないと言われたようなものだからか。

何だかもやもやする。

もやもやしてイライラする。


何だか、何となく、もやもや。


会社に戻ると、磯村さんは受付の子に呼び止められて話始めたからそこで別れ、それから総務部に戻る。

午前中で勤怠管理はチェック済みだから、多少手が空いた人に主任が仕事を割り振りしなおしていた。


「あ。伊原さんお帰り。磯村さんのケガはどうだった?」

「はい。6針のケガでした」

「就業中のケガだから労災申請かな。書類営業部にわたさなけりゃ」

「社内メールで送ります」

「連絡もよろしく。後は……伊原さん牧のフォロー頼めるか? あいつ、ちょっとミスってなぁ」

振り返ると、パソコンにかじりついていた後輩が、少しだけ嫌な顔をした。


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