強引男子にご用心!

そうだね。
嫌な顔もするよね。

午前中、私は後輩たちの質問をバッサリ一刀両断にしたんだから。

「どこをミスしたの?」

聞くと、少しだけ目を丸くされた。

「えっと、法務部への連絡事項で……」

そう言って、尻すぼみになる声音に苦笑する。

「あそこは小さな文面のミスにもうるさいから、気にすることはないわ。先に営業部に労災申請のメール流すから、共有ファルダの私のファイルに、法務部用の書類作成例を入れてるから見ておいてくれます?」

「え。見てもいいんですか?」

「聞けないなら盗むしかないでしょう」

「や。あの……その。い、伊原さんに聞けない訳じゃ」

聞きにくいでしょうよ。

私は親切じゃないし、親切にもしてこなかったし。

質問されれば答えるし、質問されなければ答えないし。

きっと、これからもそうだし、そうしないと社会からは弾かれるだろうし。

いっそ、弾かれてしまった方が楽なのかもしれない。

弾かれて、一人になって……

そうすれば他人を煩わせなくて済むし、自分だって煩わされない。

そのつもりで生きてきたし、生きていくんだし。

でも、寂しいから人の中にいたいから、我慢しているかもしれない。
そんな時もあるかもしれない。


我が儘だな。
我が儘過ぎる。

近づいてほしくはないくせに、一人は寂しい……なんて、我が儘だ。

近づきたくもないくせに、一人は寂しいなんて……自分勝手過ぎる。


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