強引男子にご用心!

普通の……

「あんた。自分で飯作ってるのか?」

「…………」

なんっで、貴方が普通にいるの?

貴方、外回りして直帰する予定じゃなかったの?

何故、ここにいるの。

どうして、ここにいるの。

ここ、うちの近所のスーパーなんですけど?

仕事帰りに買い出ししに来ただけなのに、どうしてこの男がいるの。


「大根にニンニクにイカに? 何を作るんだ?」

「何故、磯村さんがここにいるんですか、どうして私の横に来るんですか」

「最近引っ越してきた。最寄りのスーパーがここ。煙草とビール買いに来たらあんたがいたから」

「迷惑です。煙草とビールを買って、さっさとお帰りください」

磯村さんはニヤニヤ笑うと、唐突に顔を近づけてきたので一歩引いた。

「なぁ、あんた」

「何ですか」

「対人恐怖症か何か?」

「ち、違います!」

確かに最近は近いものがあるけれど、人が怖い訳じゃない。

「じゃ、潔癖症だな。大変だな~、それで社会人やるのも」

「…………」

どうして解ったの?

「……不思議そうな面してんな。解るだろう。ファイルを捜しに行くだけで、あんな完全装備してりゃ。掃除って言うなら解るが」

そうか。そうかも知れない。

まさか、磯村さんに言い当てられるとは思っても見なかったけど。

だいたい、この会社に入社して数年になるけれど、営業部の事務の人とは接点あっても、営業の人と接点なんてほとんどない。

たまに会議室を押さえておいて欲しいと言う内線はあるけれど、会議室の鍵は事務の子が取りにくるし。

そう考えて見れば、この男との最初の接点は最悪だったと思う。

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