強引男子にご用心!
戻ると総務部が騒がしい。
「どうしたの?」
声をかけると千里さんが振り返り、それから後輩の一人を指す。
「ミスしちゃったらしくて……」
見ると、一人の後輩が主任に叱られている最中で……
「……もしかして、発注?」
「はい。書類の数値、間違ったまま発注してしまったみたいで」
それは色々まずいんじゃないかな。
と、言うか、怒るより先にすべき事がありそうな気がする。
思っていたら、課長が先に動いた。
主任からミスの書類を取り上げ、ざっと眺めると顔を上げる。
「伊原君、柿沼工業。数値200に変更。千里君、イーシー・クラフトワークに連絡。なんとか100にならないか交渉してくれ。牧君は……」
「あ……。イーシー・クラフトワークなら私の方が話は通るかと」
片手を上げると課長が微かに笑った気がしたけど、一瞬の事で私は千里さんを振り返っていた。
「柿沼工業は、工場長の乃坂さんて方に連絡して、あくまでも下手に、そして甘えるように」
「あ、甘えるんですかぁ?」
「乃坂さん。若い子に弱いから」
「せ、先輩ぃ」
「私に甘えない。しっかりして!」
デスクに戻るとすぐにパソコンに保存していた、イーシー・クラフトワークの浅田さん直通の番号を探し出す。
この人には逆に甘えは通じない。
事務的で融通が効かない。
効かないから、取り引きと駆け引きをしなくちゃいけない。
千里さんには荷が重い。
連絡がつくと、事務的に冷たく突き放されながらも交渉開始。
途中、磯村さんの姿が見えたけれど、他の子が応対していた。
そして……