強引男子にご用心!
カチャンと受話器を置く音と、皆の視線に緊張。
気づけばかなりの時間を浅田さんとお話ししていたらしい。
「……えーと、すみません。200で折り合いついた感じです」
課長が肩を落として、それでも少し安心したように笑顔を振り撒く。
「まぁ、1000よりはいいだろう。悪いことしたなぁ。連絡と同時にライン止めてくれたんだろう」
100が1000だったんだ。
「お疲れさん。これで通常業務にもどれるが……原、少し発注体制変更しよう。確認がずさんな気がする」
主任が呼ばれて行って、注意をずっと受けていた後輩が皆に頭を下げていた。
それを見るともなしに見て、デスクに置かれた書類に気がついた。
磯村さんの労災申請。
そこに黄色いメモが貼られている。
お疲れ様。
たった一言。
「…………」
磯村さんが、例えエロ鬼畜であろうと。
胡散臭い爽やか営業であろうと。
少しだけ、モテる理由が理解できた気がした。